どこかの誰かのブログ

同性愛者ということに気付いてしまったというだけの、一般人のブログです。

親友だと思っていた同性の人間に一方的に別れを告げて消えた。

親友だと思っていた同性の人間に一方的に別れを告げて消えた。
つい数年前のことである。

そいつと出会ったのは学生の時。同じ学校を卒業して卒業後も仲良くしていた。

「今度結婚するんだ。」

そう目の前で言われてから、自分が何を考えていたのかあまり覚えていない。

とにかく泣いたことは覚えていて、本人の前でもうっかり涙を零してしまった。
「おめでたくて」と答えた。嘘だった。
ただただ寂しくて悲しかった。胸が苦しいって本当にあるんだなって思ったのを覚えている。


付き合っている恋人がいることは知っていたし、たまに惚気も聞いていた。
恋人もいない自分はそれを聞くのが嫌で、しれっと話題をそらしたり「やめろよ」と茶化したりして、あまり深い話は聞かなかった。だけど、話しぶりからすごく幸せなことは知っていた。


頭の悪い自分は、結婚するという話を聞いたその後、涙が出た瞬間に気づいてしまった。


「ああこれって多分失恋ってやつだな」と。


出会った時からとにかくそいつと遊ぶのが楽しくて、どこに行くにも一緒で、惚気を聴くのが嫌で、家に泊まりに行くのにどうにも緊張して、一緒に行ったくだらない買い物やなんでもないスキンシップがとにかく嬉しくて。


好きで好きで堪らなかった。


「もう自分のそばにはいられない」
「自分ではない別の人間と幸せになって暮らすのだ」

結婚すると言われたとき、ずっと目を背けていた現実たちが一斉に目の前に現れた気がした。それは大きなハンマーとなり、自分の体をガツンと殴った。


「私はお前の幸せも願えない最低な人間なんだ。」


そう気付いてから、とにかく傍にいるのが申し訳なくなって、罪悪感に押しつぶされそうになった。それから、そいつの結婚式を想像して、何日も、何か月も毎日泣いた。かなりやつれた。


少し冷静になってきたころ、「結婚式で友達代表のスピーチをしてよ。」と声をかけられた。


友達代表だって思ってくれてるのか、そう思った瞬間嬉しさと悲しさでまた泣いた。

 

無理だよ。

 

正直に理由を話して、それから一方的に連絡を絶った。
友達代表と言ってくれた人間に対してわがままで最低な対応をしたと思った。
それから、自分を嫌いになってくれと思った。


それからあまりにも心が荒みすぎて、とりあえず誘われた合コンとかそういう出会い系のイベントに行ったりして気持ちを紛らわせようとした。あまり向いていなくて、毎回ドッと疲れた。


正直、自分はモテる方だと思う。
そういうイベントに行くとだいたい4、5人の異性からご飯に誘われるし、普通に恋人もいた。

ただ、いざそういう雰囲気になっても、恐ろしいほど何も感じない。
キスも嫌でしかなかったし、異性の裸体を見ても何も興奮せず、ほぼマグロのような状態になってしまうのである。結局、最後まではしたことがないまま今日まで生きてきた。


この一見以来、自分はセクシャルマイノリティの人間だったのだろうかと考えるようになった。
今までは世間に流され、自分は異性愛者だと思い込んでいたが、同性愛者なのかもしれないし、また違うものなのかもしれないと。


今のところ結婚も特にしたくないし、自分の遺伝子を持って生まれてくる子供は可哀そうで、子供も欲しいとも思わない。
結婚イコール幸せなんていうのはあまりにも前時代的な価値観で、自分自身が結婚できなくともそれが悔しいとも悲しいとも思わないし、それはそれで楽しい人生が送れそうだとも思っている。

 

じゃあ今なぜ自分が恋人探しみたいなことをやっているのかというと、心が荒んでいるのはもちろんだが、両親に孫の顔を見せてやりたいというのが一番の理由である。

両親は良くも悪くも前時代的な人間で、自分が同性愛者だと知った時には悲しむのだろうなと容易に想像できる。

自分のことを受け入れてもらえたら幸せなんだろうが、その時代に生きてきた人間の価値観を簡単に払拭することは容易ではないし、自分自身、個人の価値観を押し付けるつもりもない。

実際自分が異性と結婚して子供を作ったとしたら、すごく喜ぶんだろうな。一人っ子で何も両親に恩返しが出来ていない自分が出来る恩返しといえば「孫が欲しい」という両親の願いを叶えることくらいなのに、多分その願いは叶えてあげられない。


ただそのことが気がかりで、どこか自分を同性愛者だと認められない自分がいる。
一方でもう孫を抱かせてあげられないことは薄々感じている自分もいて、どうしようもない。
ごめんね。


世間体や親への申し訳なさ、周りの人間からのプレッシャーでしたくもない結婚を考えていた時期に、あいつから結婚の話を聞いて、結婚をやめようと思った。

あいつがいなかったら自分は異性愛者だと思い込んだまま、どこかの誰かと結婚して子供を作っていたんだろうか。

その未来は幸せだったんだろうか。

私はどうすれば正解なのだろうか。


結婚イコール幸せではない、という考えを持っているという話を上に書いた。
本当にそう思っているのだが、周りの人間がそれを「おかしい」と否定してくる。
おかしい、可哀そうと言われ続けると、人間なので本当に自分の考えは正しいのだろうかと気がおかしくなってくる。


仮に自分の意見が間違ってないのだとして、こんなに罵倒を浴びせられながら生きていくのだったら、嘘でもいいから結婚するべきなのか、とさえ考えてしまう。


結婚はイコール幸せではない。
でも自分の家にあいつが泊まった時、あいつがバイトから帰ってくるのを待ちながら夕飯を作っていたあの時は、ただいまと言って顔を覗かせたあいつの顔を見たときは、本当の本当に、幸せだったなあと思う。


幸せだったなあ。